2006.05.25
内地からの「移住者」獲得に動き出した北海道
「国内移住」や「田舎暮らし」がちょっとしたブームとなっている。その主たる客層は、一斉にリタイアの時期を迎えた「団塊の世代」だ。
こうした「移住者」を獲得すべく、北海道から沖縄まで、多くの自治体が動き出した。中でも移住者の間で不動の人気を誇る北海道の動きは、全国的にも注目を集めている。
道では、平成17年度より「北の大地へ移住促進事業」として、道内50の自治体から成る「北海道移住促進協議会」を組織、各自治体にワンストップサービスの移住相談窓口を開設した。同事業の特徴は、協議会に参加する50の自治体が移住者を受け入れるべく、それぞれにアイディアを競い合っている点であろう。各自治体は仲間であり、ライバルでもあるというわけだ。
短期滞在の「お試し移住」で人気を集める当別町
北海道内の市町村の中でも、とくに注目を集めているのが、石狩管内・当別町の移住促進策であろう。
同町は180万都市・札幌からJR札沼線で約40分、車で約45分の距離にある。北海道らしいのどかな田園風景が広がる一方で、大都市札幌のベッドタウンとしての顔も合わせ持つ。「都会」と「田舎」の双方の便益を享受できるマチと言えるだろう。
同町が実施しているユニークな移住促進策は、短期滞在による「お試し移住」だ。
いきなり見ず知らずの土地に移住するには、かなり入念な準備と「覚悟」が必要となる。実際、移住してから「こんなはずではなかった」という「不適合」を起こす例も少なくない。同町の「お試し移住」は、こうした「不適合」を事前に回避するとともに、「体験」をもとづいて複数の候補地から「選抜」してもらう、といった狙いがあるようだ。道内では函館市や伊達市なども「移住体験事業」を実施しているが、内地の「大都市圏」の生活に慣れ親しんだ層には「大都市・札幌市に近い」という部分で、他を一歩リードしているように見える。
「いたれりつくせり」のフル装備の住宅が月15万円から
当別町がお試し移住の住居として用意したのは、一戸建て・マンション合わせて計5ヶ所。家だけでなく、夫婦が一般的な生活をするのに必要な家財道具の一切-暖房、照明機器、給湯機器、水洗トイレ、浴槽、洗濯機、冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ、テレビなどの家電製品から食器、鍋類まで-を揃えている。
町はこれら一式を、月15万円前後で賃貸する。この費用には家賃・生活用品レンタル料のほか、光熱費、駐車場代、清掃料が含まれており、敷金などは不要。ウィークリーマンション顔負けのサービスだ。
なお、滞在中は町や町内の商工業者からなる「当別町移住協議会」のメンバーが希望に応じ、生活や観光の情報を提供するという。
移住者獲得をめぐり、自治体間の競争が激しさを益すなか、同町のユニークな移住促進策は、全国的にも注目されるところだろう。
写真提供、取材協力:北海道当別町
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