2007.10.20
「次元」を超えた発想のバーチャルオフィス。その実態は?
首都圏近郊に在住し、数年前にNPO法人を立ち上げたBさん(30代、女性)。彼女の名刺に記載された住所は、都心の超一等地、千代田区永田町だ。
しかし、その住所を訪れても、まず彼女に出くわすことは無い。
その「住所」とは、登記簿などを保管したメールボックスに、供用のミーティングスペースが設置された、さながらサロンのような場所だった。バックヤードには、オフィスを管理するスタッフが常駐しており、電話の配電盤のようなものも見える。
これが「バーチャルオフィス」の3次元での姿だ。
「メールボックスや転送電話のみを利用している会員の中には、一度もここを訪れたことの無い方もいらっしゃいます。」(千代田区永田町、ユナイテッドオフィス担当者談)。
前述のBさんも、ここを訪れることは滅多に無いが、オフィスが彼女に割り当てた03発信の電話から彼女の携帯電話に「転送」される通話数は、月に100コールは下らない。
つまり、名刺に記載された「住所」と「電話番号」は、確かに存在しているという訳だ。
必要な機能を、必要なだけ選択。バーチャルオフィスは、スペースと通信の「複合サービス」。
もちろん、転送電話、電話秘書代行、私設私書箱、貸し机、などといった単体のサービスそれ自体は、既にかなり以前から存在していた。
バーチャルオフィスは、これらの機能を融合し、独自のサービス形態として芽吹いた新たな「複合サービス」と言える。コンサルタント業界やIT業界などを中心にSOHOやサテライトが一般化しつつある中、急速にし市民権を得てきた「オフィスの新しい形態」とも言えるだろう。
また昨今では、ダブルワークや週末起業、ネット通販業などの受け皿として、こうしたバーチャルオフィスを利用する例が急増していると言う。
なお、先ほどのBさんは、普段は転送電話と郵便の転送のみを利用しているが、年に数回開催される「総会」の際には、このオフィスの貸し会議室を予約し、利用している。これまでの転送電話、私設私書箱では、こうした「スペース」の提供までは無かったと言う。
まさに、必要なときに、必要な機能のみを選択できる、それがバーチャルオフィスの最大の強みだろう。しかもアドレスは都心の一等地。対外的な「信用」は計り知れない。
今後の課題は、私書箱のネガティブなイメージの払拭と、「業界団体」の創設?
しかし、バーチャルオフィスの主要な機能のひとつである「私書箱」については、「犯罪の温床」といったネガティブなイメージが付きまとう。一部の私書箱には、振り込め詐欺などの「所在地」として頻繁に登場するアドレスがあることも事実だ。当然、当局による監視の目も厳しさを増している。
また、会社としての物理的なスペースが事実上存在しないにもかかわらず、私書箱に「登記」がなされている実態についても、やがては規制の対象になるという見方も強い。
もっとも、バーチャルオフィス業界では、入会審査を厳格化することで、これまでの「私設私書箱」とは一線を引く構えを鮮明にしていると言う。ミーティングスペースや会議室など、たとえ共用ではあっても会社の物理的な実態を証明できる「スペース」を絶対条件としている点でも、私書箱とは異なると言う。
「当オフィスの入会審査は、かなりシビアです。通過率は5割程度。外部の審査機関を利用するなど、徹底的に調べますよ。」(前述、ユナイテッドオフィス)。
意外に思われるかも知れないが、実はレンタルオフィス、バーチャルオフィスの世界には「業界団体」が存在しない。ちなみに、漫画喫茶やネットカフェについては、既に「業界団体」が存在しており、それなりに声を上げる組織になっている。
今後大きなブレイクが予想されるバーチャルオフィス。
この業界の健全な発展のためには、サービスやモラルなどの規範を司る「業界団体」の登場が期待されるところであろう。
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